ギターを手に弾き語りを披露する曹洞宗・長楽寺の安達瑞樹さん
宗派を超えた僧侶たちが法話を披露し合う「H1法話グランプリ」に関わる僧侶たちの寺院を巡る毎日新聞旅行の日帰りバスツアー「名刹で法話と寺宝特別拝観 兵庫県」が2022年10月18日(火)に開催されました。今年4、5月に開催した「大阪・神戸」「奈良」に続く第3弾。今回訪れたのは曹洞宗・長楽寺(兵庫県丹波篠山市)と、天台宗・正明寺(同県姫路市)。法話に加えて黒枝豆の収穫体験もあり、約30人の参加者にはすてきな秋の1日を味わっていただきました。「つなぐ寺」が企画に協力しました。
朝8時に大阪・天王寺をバスで出発。8時半には梅田の毎日新聞大阪本社前で、H1実行委員会メンバーで正明寺の小林恵俊(えしゅん)法嗣(ほっし)がご同乗くださいました。
バスにご同乗くださった正明寺の小林恵俊さん
丹波篠山に向かう車内で小林さんは、お坊さんの宗派の違いの見分け方などについてお話しくださいました。ポイントは「袈裟」と「数珠」。天台宗の数珠は、そろばん玉のような平たい形が特徴だそう。小林さんは数珠は比叡山の専門学校時代の先輩からいただいたもので、梅の木製でもともとは白かったとか。「今は手の汗がしみこんだりして茶色になっています。汚いんじゃ……とおっしゃる方もいますが、私はこれまでの思いがこもっている気がしていて、大切にしています」と思いを語っていました。
長楽寺到着時は雨模様。コスモスがきれいに咲いていました
長楽寺の本堂。約250年前の建物で、茅葺き屋根を安全屋根で覆っています
丹波篠山はあいにくの小雨模様でしたが、長楽寺では同じくH1実行委員会メンバーの安達瑞樹(ずいじゅ)住職が明るく元気いっぱいに出迎えてくださいました。本堂でご本尊の観音菩薩にご挨拶をして、全員で般若心経を読経しました。
長楽寺本堂で
2019年に開かれた「H1法話グランプリ エピソードZERO」でグランプリを受賞した安達さんは落語家さんのような語り口。自己紹介だけで参加者からは笑いが巻き起こります。
軽快な語り口の安達瑞樹さん
法話では、「新型コロナウイルス禍では、日常の何気ないことのありがたさがよく分かったのでは」と呼びかけ、シンガー・ソングライターの南こうせつさんが作詞作曲した曹洞宗の歌「まごころに生きる」を紹介。仏の教えを分かりやすく表現した歌詞になぞらえて、改めて意識したい大切なことについてお話されました。
「新型コロナ禍で、日常の何気ないことを見つめ直したのでは」と語りかける安達さん
例えば、お寺の近所に住む少年のエピソード。安達さんが飼っていたスズムシを分けてあげたところ、彼は夏休みの自由研究でスズムシの飼育日記を書き、まとめの言葉に「こうやってスズムシは命をつないでいるのです」と書いてあったそう。「私たちは身近な人が亡くなった時などに改めて命について考えますが、普段の何気ない生活の中から命を見つめることが大事なのではないかと気づかされた」とお話しされました。また東日本大震災の被災者との関わりの中で、「支えていると思っていた自分が、実は支えられていた」と気づいたエピソードもご紹介くださいました。
安達さんはギターだけでなくハーモニカも演奏!
最後は安達さんがギターを持ち出して「まごころに生きる」を弾き語り。さらに小林さんにマイクを預け、全員で「上を向いて歩こう」を歌いました。笑いあり、涙ありの楽しい「法話ステージ」となりました。
門前の畑で育てている黒枝豆の収穫を体験
その後、門前の畑で安達さんが檀家さんたちと育てている黒枝豆をひと株ずついただいて収穫体験。ぷっくりとおいしそうに膨らんだお豆を袋に入れてお土産に。特製の「ゆで方」指南書とうちわもプレゼントされ、参加者の皆さんも大満足の様子でした。
ぷっくりとしたおいしそうなお豆!
近くにある「特産館ささやま」でお昼ご飯をいただき、今度はバスで姫路へ向かいます。
お昼ご飯はすき焼きの御膳。おいしかったです
姫路城と関わりの深い天台宗・正明寺
正明寺は世界遺産・姫路城の東側約400㍍ほどの場所に位置します。「このお寺は姫路城とも深い関わりがあります。もともとは、現在お城が建っている場所にあったとされ、その後この地に移転してきたようです」と小林さん。境内にはそうした由緒を示す「板碑」(市指定文化財)があり、そちらをご案内いただきました。
境内には姫路城との関わりを示す「板碑」が
法話はご本尊である阿弥陀如来に関わるお話でした。「正明寺」は以前は同じ読み方で「称名寺」と書かれていたそうです。「称名念仏」は「南無阿弥陀仏」と唱えることを意味します。
「称名念仏」について話す小林恵俊さん
「南無阿弥陀仏にはとても大きな力があるんです」と小林さん。南無阿弥陀仏と唱えるには「一心不乱」、つまり心が揺れ動かないようにすることが大事だといい、そのためには「身」(=行動)、「口」(=言葉)、「意」(=気持ち)の三つを等しく仏様に向けることを意識すると言います。「南無阿弥陀仏と唱えることで仏様と一体になり、“自分”がなくなっていくのです」。天台宗では「誰の中にも仏様の種がある」との考え方を大切にされているそうで「『南無阿弥陀仏』にはその種を花開かせるための力があるのです」。
優しい語り口で法話をする小林さん
また先日、H1実行委員会として高齢者施設で法話をした取り組みでの経験談も紹介。「法話の間はうつむいていた高齢者の方も、お坊さんが南無阿弥陀仏と唱え始めるとスッと合掌したり、同じように唱えたりしてくださいました。心に刻まれているというか、理屈ではない世界があるのだと感じました」。最後は皆さんで南無阿弥陀仏をお唱えし、正明寺を後にしました。
皆さんで合掌し「南無阿弥陀仏」と唱えました
仏教と法話に浸った1日。長時間にわたりご参加いただいた皆さま、そしてお力を貸してくださった長楽寺、正明寺の皆さま、本当にありがとうございました!
つなぐ寺では今後もH1法話グランプリ実行委員会と協力し、多くの方に法話に触れていただく機会を作って参ります。ご期待ください。
長楽寺のHPはこちら。
正明寺のHPはこちら。
小林恵俊さんのユーチューブチャンネルはこちら。
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