宗派を超えた僧侶たちが法話を披露し合う「H1法話グランプリ」に関わる僧侶たちの寺院を巡る毎日新聞旅行の日帰りバスツアー「名刹で法話と寺宝特別拝観 奈良」が2022年5月27日(金)に開催されました。
大阪・神戸ツアーに続く第2弾です。(大阪・神戸ツアーの様子はこちら)
今回は、真言律宗・長弓寺(奈良県生駒市)▽華厳宗・新薬師寺(奈良市)▽浄土宗・阿弥陀寺(奈良市)の3カ寺を巡り、約30人の参加者には法話だけでなく精進料理や国宝拝観、勤行体験など盛りだくさんの一日を味わっていただきました。「つなぐ寺」が企画に協力しました。
朝9時に大阪・梅田の毎日新聞本社前をバスで出発。バスには、現在H1実行委員会で委員長を務める阿弥陀寺の森圭介(もり・けいすけ)住職がご同乗くださいました。天王寺公園から乗車する方を加え、車は奈良へ。
バスの車内でお話をする森圭介さん
車中では森さんが、「ありがとう」「大丈夫」など身近にある仏教由来の言葉を紹介。「ウロウロする」の「ウロ」は「有漏」が語源といい、「漏は煩悩と似た意味。ウロウロするのは煩悩がある状態です」などとご説明くださいました。
長弓寺円生院の池尾宥亮さん
バスは木立に囲まれた長弓寺へ。塔頭の一つ、円生院の住職で、H1法話グランプリ実行委員でもある池尾宥亮(いけお・ゆうりょう)さんが出迎えてくださいました。
美しい檜皮葺の屋根が優しい印象の長弓寺の本堂
まずは生駒市内で唯一という国宝建築の本堂へ。池尾さんは「屋根に注目してください」と話します。こちらの屋根はお寺に多い瓦葺きではなく、檜皮葺き。柔らかい印象ですが「維持するのが大変。資材も、職人さんも不足しています」とご苦労を語ります。
縁の下の束柱は、奥に行くほど短くなっているそうです
約750年前、鎌倉時代に建てられたお堂で、多くのお寺でお手本とされるような工夫が隠されているそう。例えば、縁の下の束柱。「お堂の奥に行くほど短くなっています。つまり地面に勾配がある。奥に行くほど地面が高くなっているので雨水が流れ、建築に悪影響を及ぼす湿気を逃がすのです」と池尾さん。実際よりも奥行きがあるように見せる効果もあるそうです。
本堂で法話をする池尾さん
この日は特別に本堂内を拝観。池尾さんが声明を唱え、参加者も般若心経を読経します。その後、池尾さんが法話をしました。仏像の手がさまざまな形で表す「印」になぞらえて、ご自身が大切にしているという手のサインを紹介。それは、親指と小指を伸ばし、残りの3本を曲げたサイン。「親指はどう動かしても小指の方を向いています。でも小指は親指の方を向いていない。自分たちだけで頑張ってここまで来たと思いがちですが、実は親指のようにずっと見守ってくださった人がいる。それを忘れたらあかんと言われたのです」。さらに「やがて自分も親指となり、大切な誰かを見守る中で心が折れそうになる時もある。そんな時にはまたこの手を見て『自分もいろんな人に迷惑を掛けたな』と思い出す。それが心の支えになります」と優しく語りました。
「大切にしている」という手のサインを教えてくれた池尾さん
本堂では、秘仏の本尊・十一面観音像(重要文化財)を特別に間近で拝観しました。美しい姿に、参加者の皆さんもため息を漏らしていました。
素朴で優しい味が魅力の精進料理。おなかいっぱいになりました!
お昼ご飯は円生院の座敷で手作り精進料理をいただきました。101歳になる池尾さんの祖母も腕を振るったという料理は、鰹だしも一切使わない本格的なもの。それでも優しい甘みやうまみが素材の味を引き立て、皆さん大満足のご様子でした!
長弓寺円生院のHPはこちら。
バス内でお話しする池尾さん
その後、バスで奈良市内に移動しました。バスには森さんに代わって池尾さんが同乗。お釈迦様が仏教を開いたきっかけとなった苦悩などについてお話されました。
新薬師寺で迎えてくださった中田定慧さん
新薬師寺では「H1法話グランプリ2021」に出場した中田定慧(なかた・じょうけい)さんがお待ちくださっていました。
凜とした空気が流れる新薬師寺
奈良時代に聖武天皇の病気平癒を願い光明皇后が創建した古刹。本尊の薬師如来坐像、それを取り囲む十二神将立像など数々の国宝仏像で知られています。参加者の皆さんと般若心経を唱え、中田さんの法話を拝聴しました。
数々の国宝仏が並ぶ新薬師寺の本堂
中田さんは薬師如来について「病気の苦しみを取り除いてくださり、癒やしや安心感を与えてくださる仏様」と紹介。「病気の時は自分のことで精いっぱいで、アレをした方が良いとかコレをしたらダメとか注文されるのはつらいもの。お薬師様は『そのままのあなたでいいよ。安心しなさい』と言ってくださる」。生きとし生けるものの幸せを願う慈悲の深さについて語りました。また、奈良の寺院に伝わる「散華」の声明も披露してくださいました。
新薬師寺のHPはこちら。
阿弥陀寺で出迎えてくれた森圭介さん
最後に向かったのは、古い町並みが残る「ならまち」の一角にある阿弥陀寺。普段は拝観を受けていませんが、江戸時代創建の本堂に特別に上がらせていただき、独特のヘアスタイルの五劫思惟(ごこうしゆい)阿弥陀像などの寺宝も拝観させていただきました。
独特のヘアスタイルの五劫思惟阿弥陀さま
森さんは、浄土宗の宗祖である法然上人について語りました。比叡山で学問を究めながら、それにとらわれず初心に戻り「南無阿弥陀仏と唱えれば誰でも極楽に往生できる」という教えを打ち立てたことを紹介し「何も知らないというところに戻るのはとても大事だが本当に難しい。何か大きなショックがあって初めてできる」と力を込めます。そこから「新型コロナやウクライナの戦争で社会が大きなショックを受けた今は、実は一度『何も知らない』というところに戻るチャンスなのではないか」と語りました。
法然上人について語る森さん
最後に、浄土宗のリズムの取り方を教えていただき、全員で木魚をたたきながらお念仏を唱えツアーを締めくくりました。
阿弥陀寺のHPはこちら。
参加者みんなで木魚をたたきながらお念仏。そろえるのは意外に難しいようです
長時間にわたりご参加いただいた皆さま、そしてお力を貸してくださった長弓寺、新薬師寺、阿弥陀寺の皆さま、本当にありがとうございました!
つなぐ寺では今後もH1法話グランプリ実行委員会と協力し、多くの方に法話に触れていただく機会を作って参ります!
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